小説
「お母様、お母様お母様お母様……おかあさまアーーッ……」 嘆息。耳を塞げども聞こえてくるのなら仕方あるまい。魑魅魍魎。塀の内より、柵の内。 如何にも。吾輩は精神病院に在る。其れは“文書寄贈”の罪。 和やかなオーテーの最中のことです。響き渡る金切り声…
夜中に、目が覚めた。 エレベーターのまたそのなかに。ある小さなエレベーター。“何か”を入れるためのエレベーター。そこに入れるべき物はただひとつ。間違えると、エレベーターからは出れず、女は全部死に、男は半分死ぬ。正解すれば、女は全部生き、男は半…
いや気にしてはいるんだけど。最初に気付いたのは髪の毛っすね。床に長い髪の毛、落ちてて。それで。その時は、まあ自分の服かなんかについてたのかなとか。あんま気にしてなかったけど。あれ?って。 その髪の毛、その時はゴミ箱に普通に捨てて。あベッド脇…
或夏の日暮です。 歌舞伎町の西らへんの公園で、ぽんやり空を仰いでいる、一人の若者がありました。 若者は名をトシハルといって、元はNO.2ホストでしたが、今は財産を費い尽して、その日の暮しにも困る位、憐な身分になっているのです。 何しろ歌舞伎町とい…
その日の夕の食卓に弟の姿が無かった。寂しいとかそういう話がしたいのではなく。弟の茶わんに飯をよそっている父さんに、声を掛ける。 「あいつは?」 コツはさもなんでもないように聞くことだ。 「⋯出掛けたよぉ。」 は? こんな時間に? 金も無いのに? ⋯…
令和☓年☓月☓日。「裸足にスリップ姿の女性が徘徊している」との通報を受けたK田警察は、☓田S子さん(25(推定))の身柄を保護した。S子は約10年もの間(正確な期間は不明)、男に関係されていたという。心理検査により女性には軽度の知的障害があることがわ…
地獄に落ちたカンダタのもとに下りてきた情けの糸。下ろしたのは散歩をしていた釈迦と言われている。 しかし先日、驚きの事実が発覚した。なんとそれを下ろしたのは釈迦ではなく、蜘蛛本人だというのである。 考えてみれば、下りてきたのは「蜘蛛の糸」なの…
信じる心?美しい友情? 笑わせる。 あの日から僕はうまく笑えなくなった。たった三日間かもしれない。でも僕にとっては地獄のように長い三日間だった。地獄を見る前にはもう戻れない。 前々からあいつの強引さには少々辟易していたのだが。どちらかと言うと…
「人間は恋と革命のために生まれてきたのだ(太宰治『二十世紀旗手』)」 もう三十年以上通っている行きつけのラーメン屋さん。壁の至るところに張られている色とりどりの張り紙には“私語禁止。”と書かれています。にもかかわらず、店内はむしろ他のラーメン…